BPOに寄せられた意見から考える、テレビ報道への違和感

テレビのニュース番組に対して、「偏向報道ではないか」という声は昔からあります。ただ、その一方で「何をもって偏向とするのか」は非常に難しい問題です。

政治的な立場による偏りを指摘する人もいれば、取り上げるニュースの選び方そのものに違和感を持つ人もいます。実際にBPO(放送倫理・番組向上機構)には、ニュース番組や情報番組に関するさまざまな意見が寄せられています。

今回は、そうした視聴者の声をもとに、「ニュース番組は偏っているのか」というテーマについて考えてみたいと思います。

BPOに寄せられてる意見

実際に寄せられている意見を見ると、必ずしも「右か左か」という政治的な話だけではありません。たとえば以下のような内容があります。

  • 地上波テレビのニュース番組や情報番組は特定の事件事故ばかりを長時間放送し、政治・経済・国際情勢など重要なニュースの扱いが足りない
  • 憲法改正論議や法案の内容など、国民が知るべき政治情報が十分に報道されていない
  • ネット上では大きな話題になっているデモ活動などがテレビではほとんど報道されない
  • 事件の背景として指摘されている情報がテレビでは触れられていない

(参照元:視聴者からの意見 | BPO | 放送倫理・番組向上機構

これらに共通しているのは、「事実が間違っている」という指摘よりも、「なぜそのニュースを大きく扱うのか」「なぜこちらは扱わないのか」という疑問です。多くの人が感じている違和感は、報道内容そのものよりも、報道の優先順位に向いているように見えます。

毎日同じニュースを深掘りする必要はあるのか

本当に毎日同じニュースを何時間も扱う必要があるのでしょうか。たとえば大きな事件が起きると、

  • 現場中継
  • 近隣住民へのインタビュー
  • 専門家コメント
  • 防犯カメラ映像
  • 容疑者の経歴
  • 関係者証言

といった内容が何日にもわたって繰り返されます。もちろん重大事件であれば報道する価値はあります。

しかし、その間にも、国会では法案審議が行われています。世界では戦争や外交問題が動いています。経済政策も進んでいます。企業の大型買収や技術革新も起きています。

それらの多くは数十秒で終わるか、そもそも触れられないこともあります。視聴者の中に「事件ばかりで他のニュースが見えない」と感じる人が増えるのも理解できます。

偏向報道というより「偏った時間配分」かもしれない

偏向報道という言葉を聞くと、どうしても政治的な立場を想像しがちです。ただ、現在のテレビニュースに対する不満は、むしろ時間配分への不満のほうが大きいように感じます。

ある事件は何時間も扱う。一方で政治や外交は数分で終わる。ある話題は連日報道する。一方でネット上で大きな議論になっていても扱われない。

こうした積み重ねが、「テレビは偏っている」という印象につながっているのではないでしょうか。実際、報道しないことも一種の編集です。何を報道するかだけでなく、何を報道しないかによっても視聴者の世界の見え方は変わります。

テレビ側から考える報道内容

テレビ側だけを責めるのも少し違うと思います。テレビは視聴率を意識しなければなりません。そのため、複雑な法案解説よりも、事件報道のほうが多くの人に見られやすいのです。

また、限られた放送時間の中で、できるだけ多くの人が理解しやすい内容を選ぼうとすると、どうしても事件や事故が中心になりやすいのでしょう。実際、政治や経済を詳しく解説しても、「難しい」「わかりにくい」という意見は昔からあります。

その意味では、テレビだけの問題ではなく、視聴者側のニーズも影響しているのだと思います。

インターネットとテレビの違いも関係している

昔と今で大きく違うのは、比較対象があることです。かつてはテレビが情報源の中心でした。しかし今は、

  • SNS
  • YouTube
  • ネットニュース
  • 個人メディア
  • 海外メディア

など、無数の情報源があります。だからこそ、「ネットでは話題なのにテレビではやらない」「テレビで連日報道しているのにネットでは誰も話していない」という比較が簡単にできるようになりました。

その結果、テレビのニュース選択そのものが以前より厳しく見られるようになっています。

今、テレビは何を伝えていくべきなのか?

テレビニュースが偏っていると感じる人が増えている背景には、政治的な偏向だけではなく、「何を優先して報道するのか」という時間配分への不満があります。毎日さまざまな出来事が起きているにもかかわらず、一つの事件だけが何日も繰り返し報道される。その状況に違和感を持つ視聴者が増えているのは自然なことだと思います。

テレビの信頼を取り戻すために必要なのは、特定の立場に寄ることでも、ネットに迎合することでもありません。事件も、政治も、経済も、国際情勢も、できるだけ幅広く伝えること。

視聴者が自分で考えるための材料を増やすことこそ、今のニュース番組に求められている役割なのではないでしょうか。

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著者:編集部