夏のテレビといえば、怪談や心霊番組を楽しみにしている人も多いでしょう。 2026年8月13日にテレビ東京系で放送された『真夏の怪奇ファイル2026 見えてしまった…招かれざるモノたち』では、四国にある廃墟となった巨大宗教施設への潜入企画が放送されました。
「正体不明の人影が現れる」「誰もいないのに足音が聞こえる」といった噂がある場所を、トム・ブラウンと中川安奈さんが訪れる内容です。ほかにも、千葉県の葬儀場や事故物件とされるマンションなどで検証ロケが行われました。 こうした「いわくつきの場所へ実際に行ってみる」という企画は、昔から心霊番組の定番です。個人的にも、スタジオで怖い映像を見るだけより、実際の廃墟へ入っていく方が圧倒的にワクワクします。
ただ、少し気になることもあります。 テレビで「最恐の廃墟」「禁断の心霊スポット」と紹介された場所に、放送を見た一般人が行ってしまわないのでしょうか。 ホラー番組として面白いことと、現実に存在する場所を扱うこと。その境界は、以前より慎重に考える必要があるように思います。
『真夏の怪奇ファイル2026』では場所を特定できる情報は出していない
まず今回の番組について確認しておくと、テレビ東京の公式情報では、問題の廃墟について「四国最恐の廃宗教施設」というところまでしか紹介されておらず、具体的な施設名や住所は公表されていません。
葬儀場も「千葉県」、事故物件についてもマンション名などは明かされていません。これは、かなり大切な配慮だと思います。番組制作側が所有者や管理者などから必要な許可を得て入ることと、視聴者が勝手に同じ場所へ行くことはまったく別だからです。
テレビを見ているだけなら「怖い場所だった」で終わります。しかし、場所が特定されれば話が変わります。現在はテレビ画面の外観をスクリーンショットし、Googleマップや過去のブログ、SNSなどと照合することもできます。「ここじゃないか」と誰かが投稿すれば、あっという間に場所が広がる可能性もあるでしょう。
実際、今回の放送後にもロケ地を調べる記事は出ていますが、公式には施設名や住所が公表されていないとされています。番組が伏せていても、視聴者側が特定できてしまう時代なのです。
SNS時代には「場所を伏せる」だけでは足りなくなるかもしれない
これからテレビ側にはもう一段階の配慮が求められるかもしれません。
現在は、番組が場所を公表しなくても視聴者が特定できます。外観、周辺の風景、建物の歴史など、断片的な情報があればSNS上で「特定班」が動きます。
そして一度場所が広がってしまえば、テレビ局が後から止めることは難しいでしょう。そう考えると、心霊番組では単に住所を伏せるだけではなく、「撮影は許可を得て行っています」「私有地への無断立ち入りはしないでください」といった説明を明確に入れることも必要になってくると思います。
少々現実的すぎて怖さが薄れるかもしれませんが、エンターテインメントとして楽しむことと、実際に同じ行動をすることの境界は示しておいた方がよいでしょう。
廃墟は「誰のものでもない場所」ではない
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そもそも廃墟という言葉から、誰も使っていない自由な場所のような印象を受けることがあります。
しかし、建物が使われなくなったからといって、所有権までなくなるわけではありません。誰かが所有している土地や建物であれば、勝手に入ってよいわけではありませんし、老朽化した建物なら床や階段が抜けたり、天井や壁が崩れたりする危険もあります。ここは心霊現象が本当に存在するのかという話とは切り離すべきでしょう。
幽霊が出るかどうかは分からなくても、老朽化した建物が危険なのは現実です。テレビでは撮影スタッフが事前に確認し、必要な準備をしたうえでロケをしているとしても、視聴者からはそこまで見えません。画面に映るのは「芸能人が懐中電灯を持って廃墟を歩いている姿」です。そこだけを真似してしまえば、単純に危険です。
とはいえ「廃墟ロケをやめるべき」とは思わない
心霊番組は廃墟を扱わない方がよいのでしょうか。私は、そこまで規制する必要はないと思います。
むしろ廃墟や古い建物が持つ独特の雰囲気は、ホラー番組の大きな魅力です。『真夏の怪奇ファイル2026』でも、四国の巨大廃墟だけではなく、葬儀場や事故物件など、実在する場所で検証することが番組の怖さにつながっています。
全部をスタジオ収録や再現ドラマだけにしてしまえば、心霊番組ならではの「何か起きるかもしれない」という面白さは薄れてしまうでしょう。問題なのは、廃墟へ入ることそのものではありません。テレビ番組として許可を得て行うロケと、誰でも行ってよい場所であるかのように見せることは違うという点です。ここを明確にすれば、廃墟ロケと安全への配慮は両立できると思います。
テレビが紹介すると「心霊スポット」という価値が生まれてしまう
考えたいのが、テレビ番組そのものが場所のイメージを作ってしまうことです。
普通の廃墟だった場所でも、全国ネットの番組で「最恐」「怪奇現象が起こる」と紹介されれば、その瞬間から有名な心霊スポットになる可能性があります。すると、肝試し目的で訪れる人が出てくるかもしれません。周辺に住宅があれば、深夜に車や若者が集まることも考えられます。近隣住民にとっては、幽霊よりそちらの方がよほど困るでしょう。
葬儀場やマンションとなれば、さらに慎重さが求められます。現在利用している人がいる施設を「心霊スポット」として有名にしてしまえば、営業や生活にも影響しかねません。
今回の番組が施設名や具体的な所在地を伏せているのは、そうした問題を考えても妥当な判断だったと思います。
心霊スポットは「見る場所」であって「行く場所」でなくてもいい
個人的には、テレビの心霊番組にはこれからも廃墟へ行ってほしいと思います。薄暗い廊下を進み、誰もいない部屋にカメラを置き、不可解な音がして出演者が驚く。夏のテレビとして、こういう番組が一つくらいあってもいいでしょう。
ただ、視聴者まで同じ場所へ行く必要はありません。テレビだから入れる場所があってもいいと思います。むしろ、「自分では絶対に入りたくない場所へ、芸能人とカメラが代わりに入ってくれる」という距離感こそ、心霊番組の面白さではないでしょうか。
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