Netflixの恋愛リアリティシリーズ『ラヴ上等』をきっかけに、タトゥーを入れた人たちへの視線が改めて注目されています。

同番組には、顔や身体に多くのタトゥーを入れた出演者も登場しています。シーズン2では「顔面タトゥー、優しさ迷子」と紹介される美容師なども出演し、その外見がネットニュースやSNSで大きく取り上げられました。

番組を見れば、タトゥーのある出演者も恋愛に悩み、相手を気遣い、時には弱さを見せます。一方、SNSではタトゥーそのものに対して「怖い」「反社会的なイメージがある」といった意見も依然として見られます。

日本では現在も、タトゥーがあることで温泉やプールなど一部施設の利用を断られることがあります。

では、実際にタトゥーを入れている人は、こうした状況をどう考えているのでしょうか。

今回は琴線に触れる株式会社代表の名城さんと、全身に複数のタトゥーを入れているAさんが対談しました。Aさんの希望により、氏名と顔写真は非公開としています。

名城さん自身もタトゥーを入れていますが、二人の考えは必ずしも同じではありません。

「タトゥーがあるだけで施設を利用できないのはおかしい」と考えるAさんに対して、名城さんは「現在のルールを知ったうえで入れている以上、施設側の判断には従うべき」と話します。

タトゥーへの偏見はなくすべきなのか。施設側のルールは変えるべきなのか。そして、タトゥーを入れている側にできることはあるのか。

二人の率直なやり取りから考えていきます。

タトゥーがあるだけで温泉に入れないのはおかしい?

▲琴線に触れる株式会社 名城社長

名城:
昨今、タトゥーが入っていることで温泉や施設に入れないことがありますよね。Aさんはどう思います?

Aさん:
普通に「なんで?」って思いますね(笑)。

タトゥーが入ってるだけで、別に騒いでるわけでも、人に迷惑かけてるわけでもないじゃないですか。

それなのに「タトゥーがあるので入れません」と、そこだけで判断されるのは意味分かんないです。

名城:
特に温泉とかですか?

Aさん:
そうですね。

よく「怖いと感じるお客さんがいるから」って言われるじゃないですか。でも、それってこっちが悪いんですか?って思います。

見た目が怖い人もいるし、派手な服の人も、ピアスだらけの人もいる。それなのにタトゥーだけ一律で施設から締め出されるのは変じゃないですか。

外国人観光客も増えて、海外ではタトゥーを入れてる人なんて普通にいるわけですし。

逆に聞きたいんですけど、名城さんはタトゥーが入ってる人を温泉に入れないのって妥当だと思います?

名城:
僕は妥当だと思ってます。

というのも、日本では「タトゥーが入っていると温泉などに入れないことがある」って、ほぼ一般常識として知られているじゃないですか。

そのルールを分かったうえで入れてるんだから、そこは従うべきだと思うんですよね。

Aさん:
いや、そこはちょっと違うと思います(笑)。

「ルールを知ってて入れたんだから、入れないこと自体は受け入れろ」というのは分かりますよ。少なくとも「知らなかった」は通らない。

でも、知ってたことと、そのルールが妥当かどうかは別じゃないですか?

昔から変なルールが残ってたとして、「みんな知ってるから従え」で終わったら、ずっと変わらないですよね。

俺からすると、「タトゥー入れたら温泉入れません」というルール自体に疑問があるんです。

普通にお金払って、騒がず風呂に入るだけなのに、なんで肌に絵があるだけでダメなの?って。

入れた側に自己責任があるのは分かる。でも、自己責任だからルールについて何も言うな、は違うと思いますね。

名城:
僕が気になるのは、施設側なんですよね。

いわゆるファッションタトゥーならいいじゃん、という考え方も分かります。

でも、そもそもタトゥーや入れ墨を断ってきた背景には、反社会的勢力の利用を断る目的もあったわけじゃないですか。

そこで「この人のタトゥーはおしゃれだからOK」とやり始めたら、今度は「なんであの人はいいのに俺はダメなんだ」という話になりますよね。

Aさん:
ああ、それは確かに施設側からしたら面倒ですね。

名城:
そうなんですよ。

誰のタトゥーならOKで、誰ならダメなのかを現場のスタッフが判断するのって、かなり難しいと思うんです。

だったら一律で断るというルールにも、施設を守る意味では一定の合理性があると思ってます。

Aさん:
なるほどなあ。

俺は利用する側からしか考えてなかったですね。

ただ、それでも「タトゥー=怖い人」という前提でずっと扱われるのは嫌ですけどね。

「タトゥーが怖い」と感じる人を責めても変わらない

名城:
「タトゥー=怖い人」っていうのはもちろん、僕も偏見だと思っています。

僕の周りにもタトゥー入ってる人っていっぱいいますけど、別に悪い人なんて全然いないんですよ。

でも、タトゥーがたくさん入った人が何人か集まってたら、何も知らない人からすれば「怖い」と思うことはあるじゃないですか。

Aさん:
名城さんは、それもおかしいとは思わないんですか?

名城:
偏見ではあると思いますよ。

ただ、「偏見持つなよ」って怒っても仕方ないと思ってるんです。

僕はむしろ、「いや、そんな怖い人たちじゃないし、みんないいやつだよ」って知ってほしいんですよね。

タトゥー入ってるからって怖い人だと決めつけないでほしい。

僕の根本はそこなんです。

Aさん:
それ聞くと、名城さんの考え方って結構優しいですね(笑)。

俺は最初、「怖いと思う側が考え方変えろよ」って思ってたんですよ。

でも名城さんは、変えてほしいなら、変わるきっかけをこっちから作ろうよ、って話なんですね。

名城:
そうですね。

タトゥー入ってる人が集まってるのを見て怖いと思った人に、

「偏見だろ!」

って言ったら、余計怖くないですか?(笑)

Aさん:
たしかに(笑)。怖さ増しますね。

「勝手に怖がってんじゃねえよ!」って言われたら、「ほら怖いじゃん」ってなりますもんね。

名城:
そうそう(笑)。

それより「そう思いますよね。でも話したら普通ですよ」くらいの方がいいと思うんです。

Aさん:
それはかなり納得しますね。

「偏見をなくせ」と相手に要求するんじゃなくて、偏見がなくなる体験をこっちから作るということですよね。

「最初は怖いと思ってた」と言われたらどうする?

Aさん:
名城さん自身が、タトゥー入ってない人から「やっぱタトゥー入ってる人って怖いよね」って直接言われたら腹立たないんですか?

名城:
それ言われたら、

「え?じゃあ俺のこと怖いって思ってたんすか?(笑)」

って言います。

Aさん:
それめっちゃいいですね(笑)。

たぶん、その返し自体が一番「怖くない」を伝えてますよね。

真正面から「偏見だ!」って返すより、「え、俺も?(笑)」くらいで崩した方が、相手も「あ、たしかに」ってなりそう。

名城:
実際、そういう会話になったことありますよ。

「じゃあ最初の頃、怖いと思ってたんすか?」って聞いたら、

「そりゃあ、そんだけ入ってたら怖いよ(笑)。でも実際話してみて、こんなふざけた人だと思わなかった」

って言われました(笑)。

Aさん:
いや、それが答えじゃないですか(笑)。

その人は最初、完全に「タトゥー多い=怖い」で名城さんを見てたわけですよね。

でも話してみたら、

「え、普通じゃん」

どころか、

「めっちゃふざける人じゃん」

になったってことですね(笑)。

名城:
そうですね(笑)。

Aさん:
俺が最初に言ってた「偏見持つ側が変われよ」って、正論ではあると思うんです。

でも、人の感覚って正論だけじゃそんな簡単に変わらないんですよね。

実際に会って、

「思ってた人と違うな」

って経験した方が、よっぽど強いのかもしれないですね。

そこは今回話してて、俺もちょっと考え変わりました。

偏見をなくすなら「思っていたのと違う」を増やす

タトゥーを理由に施設利用を断るルールについて、二人の意見は最後まで完全に一致したわけではありません。

Aさんは「迷惑行為をしていない人まで一律で断る必要があるのか」と疑問を持ち、名城さんは「施設側が個別に判断する難しさを考えれば、現在のルールにも理由がある」と考えています。

一方、タトゥーを入れている人に対する「怖い」というイメージについては、話を進めるうちに二人の考えが近づいていきました。

偏見を持っている相手に「考え方を変えろ」と求めるだけでは、人の感覚はなかなか変わりません。

実際に話してみたら普通だった。むしろ面白い人だった。仕事も真面目にしていた。

そんな経験が積み重なることで、タトゥーという外見から抱いていたイメージは少しずつ崩れていきます。

Aさんは対談の最後に、こんな言葉でまとめました。

「タトゥーへの偏見をなくしたいなら、“偏見を持つな”って怒るより、“あれ、思ってたのと違う”を増やす方が強い。これは確かにそうだと思います」

タトゥーを入れている側と、怖いと感じる側。

どちらかだけに「考え方を変えろ」と求めるのではなく、実際に人と人として接するところから、見え方が変わっていくのかもしれません。