2026年9月5日に放送されたフジテレビ系『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』のある企画が、SNSで物議を醸しています。
問題となったのは、「秒でCM撮影かと思ったら落とし穴…と思ったら?????」という企画です。
ネルソンズ・和田まんじゅうさん、JOYさん、ザブングル加藤さんの3人が、サントリーのWebCM撮影だと思って現場へ。ところが撮影中に落とし穴へ落とされ、「CM撮影自体がドッキリだった」と明かされます。
ここまでなら、よくあるCM撮影を使ったドッキリです。
しかし、その後に「実はCMの話は本当」と再びネタばらし。3人は本当にCMへ出演できると知らされます。
ところが後日、さらにもう一段階仕掛けがありました。
実際にCMへ出演できるのは3人のうち1人だけだったのです。最終的にはザブングル加藤さんが選ばれ、和田まんじゅうさんとJOYさんには謝礼金が支払われました。
番組公式の紹介でも、この企画は「天国から地獄…そしてまた天国へ」と、出演者の感情を大きく揺さぶる企画として打ち出されていました。
ドッキリとしては確かによくできています。
ただ、今回引っかかるのは、最後にひっくり返したものが単なる賞品ではなく、芸能人にとってかなり大きな意味を持つ「仕事」だったことです。
CM撮影が嘘だった、までは普通のドッキリ
今回の企画には、いくつもの「どんでん返し」が用意されていました。
最初はCM撮影だと思わせる。
落とし穴へ落として「実はドッキリでした」と伝える。
そこから「でもCMは本当です」と喜ばせる。
ここまでなら、むしろ最後はうれしいサプライズです。
芸能人に偽の仕事を用意し、最後にネタばらしをするドッキリ自体も珍しくありません。
今回も、この段階で終わっていれば「落とし穴には落ちたけれど、本当にCM出演が決まった」という気持ちのいい終わり方になっていたでしょう。
ところが番組はさらに、「実は3人全員ではなく、出演できるのは1人だけ」ともう一度ひっくり返しました。
番組情報でも、最終的にCM出演者として選ばれたのはザブングル加藤さんで、残る2人にも謝礼金が用意されたことが確認できます。
ここで、ドッキリを見る側の感覚も少し変わったのではないでしょうか。
「CMに出られる」は芸能人にとって単なる景品ではない
仮に今回の商品が「100万円もらえます」だったとします。
実は3人ではなく1人だけでした。
これなら、悔しがる姿も含めてバラエティーとして成立しやすかったかもしれません。
しかし、今回使われたのはCM出演です。
芸能人にとって、大手企業のCMへ出演することは単に一回テレビへ出られるという話ではありません。
仕事としての収入はもちろん、知名度や今後の仕事にも関係する可能性があります。
しかも今回、3人は一度「自分たちは本当に選ばれた」と信じています。
和田まんじゅうさんとJOYさんが家族旅行について話すなど、CM出演への期待を見せていたことも、視聴者が「さすがにかわいそう」と感じた理由でしょう。
つまり、番組側が最後に取り上げたのは「ドッキリでもらえるご褒美」ではなく、本人たちにとって現実の仕事だったわけです。
そこを笑いにすることに、違和感を抱く人が出るのは不思議ではありません。
MCまで知らなかったことが、余計に「悪ノリ」に見えてしまった
今回特徴的だったのは、スタジオ側にも最後の仕掛けが共有されていなかったことです。
3人のCM出演が決まったと思って喜んでいたMC陣にも、「実は1人だけ」と後から知らされたと報じられています。
その際、小池栄子さんが「私たちも知らなかったから」と困惑したことも話題になりました。
もちろん、出演者にも秘密にしておくことでリアルな反応を撮るのは、ドッキリ番組ではよくある手法です。
ただ今回は、そのリアルな困惑がかえって「そこまでやる必要があったのか」という印象を強くしてしまったようにも感じます。
ドッキリには、仕掛ける側と仕掛けられる側があります。
しかし視聴者が笑えるかどうかは、最後に「仕掛けられた本人も笑える状態になっているか」にかなり左右されるのではないでしょうか。
番組側だけが一段上から「実はまだ嘘でした」と仕掛け続けると、途中からドッキリというより、人の期待をどこまで上下させられるかを見る企画にも見えてきます。
「かわいそうだからドッキリはやめよう」でもない
一今回の企画が批判されたからといって、「人をだますドッキリはもうできない」という話にしてしまうのも違うでしょう。
そもそもドッキリは、本人の知らないところで仕掛けを用意し、驚いたり、焦ったり、落ち込んだりするリアクションを楽しむものです。
毎回ターゲットが少しも嫌な思いをしない企画にしようとすれば、ドッキリ自体がかなり成立しづらくなります。
『ドッキリGP』も2018年から、数多くのドッキリを放送してきました。今回も番組側としては、感情が何度も逆転する新しいドッキリとして設計したのでしょう。9月5日の番組紹介でも、「ターゲットの心をかつてないほどに揺さぶる」「前代未聞のドッキリ」と予告されています。
その意味では、狙い通りのリアクションを引き出した企画とも言えます。
さらに、選ばれなかった2人に何もなかったわけではなく、謝礼金も用意されています。
そのため、「出演者を完全に放置した悪質な企画」と断定するのも少し違います。
問題は、ドッキリをすることそのものではなく、何を使って人の感情を揺さぶるかでしょう。
「ネタばらしで終わる」がドッキリの安心感だったのでは?
今回の企画を見ていて興味深いのは、「ネタばらし」の意味です。
普通のドッキリなら、「実は全部嘘でした」と明かされた瞬間に終わります。
仕掛けられた人もそこで現実に戻り、視聴者も安心して笑える。
ところが今回は、
「嘘でした」
「やっぱり本当でした」
「でも全員ではありませんでした」
と、ネタばらし自体が次のドッキリになっています。
番組としては、そこが新しかったのでしょう。
ただ、ネタばらしを何度も裏返せば裏返すほど、ターゲットは「何を信じればいいのか」が分からなくなります。
今回の企画が「面白い」より先に「かわいそう」と受け取られた背景には、その構造もあったのではないでしょうか。
ドッキリは騙す企画ですが、最後には「ここからは本当です」という地点がある。
その安心感があるから、視聴者もそれまでのリアクションを笑える部分があるように思います。
ドッキリの境界線は「本人も最後に笑えるか」
.png)
今回の企画は、落とし穴そのものが問題だったわけではありません。
CM撮影が偽物だったことだけなら、おそらくここまで大きな議論にはならなかったでしょう。
視聴者が引っかかったのは、一度本物のCM出演を約束されたような状態になった後で、それを再び「3人中1人」とひっくり返したことです。
もちろん、どこからが「やりすぎ」なのかに明確な答えはありません。
同じ映像を見ても、「めちゃくちゃ面白かった」と感じる人もいれば、「笑えなかった」と感じる人もいます。
ただ、ドッキリ番組が今後も攻めた企画を続けていくのであれば、一つの目安になるのは、ネタばらしをされた本人が最後に笑えるかどうかではないでしょうか。
今回の『ドッキリGP』は、企画としては確かに手が込んでいました。
その一方で、ドッキリは「どれだけ騙せるか」だけではなく、最後にどんな気持ちで現実へ戻してあげるのかまで含めて演出なのではないかと考えさせられる放送だったと思います。
.png&w=3840&q=75)